目次
立入禁止の場所
俺の地元には、昔から決して入ってはいけない場所がある。
それは町外れにある、使われなくなった採石場の跡地。
今ではフェンスが張られ、「立入禁止」の看板がいくつも立てられている。
だが、この場所には奇妙な噂があった。
「夜にあそこへ行くと、“石を投げられる”らしいぞ」
「誰に?」
「……わからない。ただ、投げられた石はどこからともなく飛んでくるんだってさ」
地元の連中は、それを『暗夜の礫(あんやのつぶて)』と呼んでいた。
「暗闇の中から飛んでくる正体不明の石」
それに当たると、不幸が起こるとか、帰れなくなるとか——そんな噂があるらしい。
「くだらねぇな」
俺はずっとバカにしていた。
——しかし、俺はそれを確かめることになった。
禁断の夜
高校最後の夏休み、俺と友人の田中、翔太、村上の3人は、軽い肝試しのつもりでその採石場に行くことになった。
「どうせただの廃墟だろ?」
「“暗夜の礫”って言っても、誰かが隠れて投げてるだけじゃね?」
俺たちは懐中電灯を手に、フェンスを乗り越えた。
中は荒れ果て、地面には砕けた岩や石が転がっていた。
だが、奇妙なことに——
異様なほど静かだった。
虫の声も、風の音もない。
まるで音が吸い込まれるような静寂だった。
「……なんか、気味悪くね?」
翔太がそう言った瞬間——
カツンッ
石が転がる音がした。
「……今の、誰か投げたか?」
「いや、俺ら何もしてねぇぞ?」
その時——
ヒュンッ!!
「うわっ!!」
暗闇の中から、小さな石が俺たちの足元に飛んできた。
俺たちは顔を見合わせた。
「誰かいるのか!?」
叫んでも、返事はない。
俺たちは懐中電灯を照らしながら辺りを見回した。
——しかし、人の姿はどこにもなかった。
闇に潜む何か
「……マジで、“暗夜の礫”ってやつか?」
そう思った瞬間——
ヒュンッ! ヒュンッ!!
また石が飛んできた。
今度は、俺の肩に当たった。
「痛っ!!」
「やべぇ、これ本物かもしれねぇ!!」
見えない何かが、俺たちに石を投げつけている。
「逃げるぞ!!」
俺たちは全速力でフェンスへと走った。
だが、異変に気づいた。
「……あれ?」
さっき乗り越えたはずのフェンスが、見当たらない。
「おい、フェンスの場所が……」
俺たちはパニックになった。
「こんなに奥まで来たか!?」
その時——
ゴトッ……ゴトッ……
暗闇の奥から、大きな石が転がってくる音がした。
そして、聞こえた。
「……ここニ、入ッテハ イケナイ……」
俺たちは悲鳴を上げ、必死で出口を探した。
消えた仲間
走り続け、やっとフェンスを見つけた。
「早く!!」
俺はフェンスをよじ登った。
翔太と村上も続く。
だが——
「田中!? お前、何してんだ!!」
田中だけが、後ろを向いたまま動かない。
「おい!! 何やってんだ、早くしろ!!」
しかし、田中はピクリとも動かない。
「なあ、聞こえてるのか!?」
田中は、ゆっくりとこちらを向いた。
俺は息を呑んだ。
——田中の目が、真っ黒に染まっていた。
そして、笑いながら言った。
「まだ、帰れないよ?」
次の瞬間——
田中の姿が、スッと闇に溶けるように消えた。
田中の行方
俺たちは必死で逃げた。
次の日、警察に通報したが——
田中はどこにもいなかった。
何度も採石場を捜索したが、田中がいた痕跡すらない。
それどころか——
採石場には、最初からフェンスなどなかった。
俺たちが乗り越えたはずのフェンスは、十年以上前に撤去されていたのだ。
「じゃあ、俺たちは……どこから入ったんだ?」
それ以来、俺たちは夢に田中の声を聞くようになった。
「まだ……帰れないよ……」
彼は今も、**“あの場所”に囚われているのかもしれない。
いや、それとも——**
すでに俺たちのすぐそばに、戻ってきているのかもしれない。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

