大学で図書館司書のバイトをしている俺は、ある日、職員の森川さんに呼び止められた。
「○○くん、ちょっと手伝ってくれる?」
「なんですか?」
「地下書庫の整理をするの。普通の学生は入れない場所だけど、職員の手が足りなくてね」
地下書庫は、大学の古い資料を保管する場所だと聞いたことがあった。
「へぇ、そんな場所あったんですね」
「ええ。でも、一つだけ注意して」
「?」
「奥の棚には手を触れないでね。」
「……奥の棚?」
森川さんは、それ以上は何も言わなかった。
だが、俺はその言葉の意味を、後になって知ることになる。
目次
禁断の本棚
地下書庫は、古びた鉄扉の先にあった。
湿気のこもった空気。
本棚には埃をかぶった書籍がぎっしり詰まっている。
俺は森川さんと一緒に、目録を確認しながら整理を進めた。
だが、ふと気づいた。
書庫の奥の棚だけ、本が異様に古く、異臭がする。
表紙は黒ずみ、背表紙の文字はかすれて読めない。
「……ここにある本、何なんですか?」
「いいから、触らないで」
森川さんはそれだけ言い、奥の棚を見ようともせずに作業を続けた。
俺もそれ以上は何も聞かず、仕事を終えた。
だが——
俺は一冊の本を見てしまった。
「禁断ノ書」
翌日、授業の合間に、俺は再び地下書庫へ向かった。
昨日の奥の棚が、どうしても気になったのだ。
誰にも見られないように、こっそり棚の前に立つ。
そして、何気なく一冊の本を手に取った。
表紙は革張りで、タイトルはほとんど読めない。
だが、かろうじてこう書かれていた。
「禁断ノ書」
「……なんだこれ?」
ページを開くと、黄ばんだ紙に何かの記録が記されていた。
だが、文字は読めない。
ただ、一番最後のページに、奇妙な文章だけが日本語で書かれていた。
「この本を読んだ者は、"迎え"が来る」
——その瞬間。
カタンッ……
書庫の奥で、本が一冊、勝手に棚から落ちた。
迎えが来る
「……っ!」
驚いた俺は、慌てて本を棚に戻し、書庫を後にした。
「……なんか、気のせいだよな?」
自分にそう言い聞かせながら、講義へ向かう。
だが、その日から——
奇妙なことが起こり始めた。
見えない影
最初に異変を感じたのは、その夜だった。
家に帰り、寝ようとした時——
カサ……カサ……
部屋の隅で、何かが動く音がした。
「……ネズミ?」
だが、うちにそんなものはいない。
スマホのライトを向けたが、何もなかった。
「……気のせいか」
布団に入り、目を閉じる。
しかし——
「……みつけた」
耳元で、はっきりと囁き声がした。
消えた本
次の日、俺は恐る恐る森川さんに尋ねた。
「あの……地下書庫の奥にあった本って、何なんですか?」
すると、森川さんの表情が変わった。
「……まさか、開いたの?」
「えっ……」
「どの本を開いたの?」
「えっと……革張りで、"禁断ノ書"って書かれてました……」
その瞬間、森川さんの顔が青ざめた。
「……それ、今どこ?」
「いや、地下書庫の棚に戻しましたけど……」
「……嘘よ」
森川さんはすぐに職員用の端末を開き、書庫の目録を確認した。
そして——
「……その本、元々この図書館には存在しないわ」
迎えの足音
俺は震えながら地下書庫へ向かった。
だが——
奥の棚には、昨日の本はどこにもなかった。
まるで最初から存在しなかったかのように。
「……なんなんだよ、これ……」
ガタッ……
背後で、棚が小さく揺れた。
「……?」
振り向くと——
本棚の隙間から、無数の"目"がこちらを覗いていた。
「迎えにきた」
——次の瞬間、俺の視界は暗転した。
その後
俺は、気がつくと自分のベッドで目を覚ました。
「……夢?」
だが、スマホの画面を見た瞬間、血の気が引いた。
カメラフォルダに、地下書庫の写真が残っていた。
しかも——
最後の一枚には、俺の背後に立つ"何か"が映っていた。
顔はぼやけていたが、口元だけが、不自然なほど大きく裂けて笑っていた。
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