怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

中古のおもちゃ──前の持ち主はどこに? 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──掘り出し物の人形

会社員の田中翔太は、休日にふらりと立ち寄ったリサイクルショップで、古びたアンティークの人形を見つけた。

それは西洋風のドールで、くすんだ金髪に青いガラスの瞳を持ち、フリルのついたドレスを着ていた。

「これ、意外と価値あるんじゃないか?」

価格はたったの500円。

コレクターではなかったが、妙に惹かれるものがあり、翔太はその人形を買うことにした。

しかし、レジの店員が妙な表情を浮かべながら言った。

「そのお人形……返品はできませんので」

「え? まあ、別にいいですけど……」

少し気になったが、まぁ気にせず家に持ち帰った。

しかし、その夜から異変が始まった。

第一章──おもちゃが動く夜

人形を部屋の棚に飾り、翔太はいつも通りベッドに入った。

だが、夜中にふと目を覚ますと、

人形の向きが変わっていた。

「……気のせいか?」

確かに正面を向いていたはずなのに、少しだけ右を向いている。

「まぁ、中古だし、倒れかけて動いたのかもな」

そう思い、気にせず眠った。

しかし、翌朝。

人形は棚から床に落ちていた。

「……何で?」

寝る前にしっかりと安定した場所に置いたはずなのに。

翔太は軽く不気味に感じながらも、また元の位置に戻した。

しかし、その日から毎晩、人形が少しずつ移動するようになった。

第二章──前の持ち主

「さすがに気味が悪い……」

翔太はリサイクルショップに電話をかけ、あの人形について尋ねた。

しかし、店員はこう答えた。

「申し訳ありませんが、当店ではおもちゃの入荷記録を残しておりません」

「じゃあ、誰が売ったのかもわからない?」

「はい。ただ……」

「ただ?」

「その人形は、以前にも何度か持ち込まれていたんです」

「え?」

「何度も売られて、そのたびにまた戻ってくるんですよ……持ち主がみんな、手放すんです」

背筋が冷たくなった。

「じゃあ、その前の持ち主って誰なんですか?」

「……最後に持っていた方は、行方不明になっています」

翔太は震える手で通話を切った。

「……やばいの、買っちまったか?」

その夜、決定的な異変が起こった。

第三章──囁く声

深夜2時。

翔太は物音で目を覚ました。

コト……コト……

「……?」

部屋の隅を見て、息が止まった。

人形が、棚から落ちて、ベッドのすぐ横に立っていた。

「……嘘だろ?」

息を殺し、布団をかぶる。

しかし、耳元で囁く声が聞こえた。

──「ここにいるよ」

その瞬間、翔太は悲鳴を上げ、人形を掴んで玄関から外に放り出した。

「二度と戻ってくるな!!」

扉を閉め、鍵をかける。

しかし、翌朝。

玄関の前に、人形が綺麗に座っていた。

まるで、「ただいま」と言うように。

終章──次の持ち主へ

翔太は耐えられなくなり、人形を夜中のうちに別の町のゴミ捨て場へ捨てた。

もう大丈夫だと思った。

しかし、それから数日後。

リサイクルショップの前を通ると、あの人形が棚に飾られていた。

「……また戻ってきたのか?」

翔太は震えながら店の前を離れた。

そして、数日後。

その人形は、また「誰か」に買われていった。

──次の持ち主のもとへ。



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