目次
フリマアプリで買った人形
大学生の妹が、ある日嬉しそうに俺に話しかけてきた。
「見て！ 可愛いでしょ？」
そう言ってスマホの画面を見せてきた。
そこには、フリマアプリで買ったというアンティークの日本人形が映っていた。
長い黒髪に、赤い着物。ガラスのような瞳が妙にリアルで、俺はすぐに嫌な気分になった。
「……なんでこんなの買ったんだよ。」
「安かったんだもん！ しかも年代物らしくて、すごく価値があるらしいよ。」
「中古の人形なんて気味悪くないか？」
「大丈夫だって！」
妹は気にせず、その人形が届くのを楽しみにしていた。
しかし——俺はそのとき、絶対に買うべきじゃなかったと気づくべきだった。
届いた人形
数日後、妹の部屋にその人形が届いた。
「ほら！ めっちゃ綺麗！」
妹は喜んでいたが、俺はどうしてもその人形が気に入らなかった。
理由はわからない。
ただ、部屋にいると視線を感じる気がするし、すれ違うたびに人形の表情が微妙に違って見えるような気がした。
「なぁ、本当に大丈夫か？」
「もう、お兄ちゃん怖がりすぎ！」
妹は気にせず、人形を部屋の棚に飾った。
その夜——俺は、妙な気配で目を覚ました。
夜中の違和感
時計を見ると、午前3時過ぎ。
ふと、妹の部屋の方を見ると、ドアが少しだけ開いていた。
「あいつ……ドア閉め忘れたのか？」
そう思いながらドアの隙間を覗くと——
人形が、棚の上から床に落ちていた。
「……え？」
まるで誰かが落としたように、人形はうつ伏せの状態で転がっている。
妹が寝返りを打った拍子に落ちたのか？
いや、でも、さっきまでちゃんと飾ってあったはずだ——。
「……まぁ、いいか。」
俺は気にせず部屋に戻り、再び眠りについた。
しかし、その翌日から——俺は奇妙なことに気づき始めた。
少しずつ変わる人形
翌朝、妹の部屋を覗くと、人形は元通り棚の上に戻されていた。
「昨日、落ちてたよな？」
妹に聞くと、「あれ？ そうだっけ？」と首をかしげた。
だが、その日から俺は、人形の異変に気づき始めた。
最初は、髪の長さが違うように感じた。
次の日には、人形の顔の向きが微妙に変わっていた。
「……絶対におかしい。」
そう思い始めた頃、決定的なことが起こった。
カメラに写っていたもの
俺は嫌がる妹に頼んで、スマホを人形に向けて動画を撮影しながら寝た。
翌朝、確認すると——
夜中の2時頃、人形がゆっくりと首を動かしている映像が映っていた。
「っ……！！！」
ゾッとして、すぐに妹に提案した。
「この人形、捨てよう！！！」
「え、なんで！？」
俺は動画を見せた。
妹も顔を青ざめ、人形をすぐに処分することにした。
だが——
ゴミ袋に入れたはずの人形が、翌朝また棚の上に戻っていた。
人形の正体
「……もう無理だ。」
俺は人形を持ち、近所の神社へ駆け込んだ。
神主さんに見せると、顔色を変えてこう言った。
「この人形、以前にもここへ持ち込まれたことがある。」
「え……？」
「処分しても、持ち主の元へ戻ってしまう。」
俺はゾッとした。
それなら、なぜフリマアプリで売られていたのか？
「もしかして、前の持ち主も手放そうとして……？」
神主さんは黙って頷き、人形にお祓いをしてくれた。
「これで大丈夫でしょう。二度と戻ってこないはずです。」
俺は安心して家に帰った。
そして、また……
それから数週間、人形は戻ってこなかった。
俺も妹も、あの出来事を忘れかけていた。
しかし——ある日、妹がポストを開けると、封筒が入っていた。
中には、小さな紙切れが入っていた。
そこには、震えた文字でこう書かれていた。
「買ってくれてありがとう。」
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