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中古人形の囁き──夜に近づく足音 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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フリマアプリで買った人形

俺の妹は人形が好きだった。

ある日、妹が「どうしても欲しい」と言ってフリマアプリで中古のアンティーク人形を購入した。

黒いガラスの瞳に、豪華なレースのドレス。確かに綺麗な人形だったが、どこか不気味だった。

「ちょっと古いけど、大切にしてあげてね。」

出品者のコメントにはそう書かれていた。

人形が動く?

人形が家に届いてから、妹は毎日のように可愛がっていた。

「この子、すごく可愛いの!」

最初は微笑ましく見ていたが、ある夜、妹が不思議なことを言い出した。

「お兄ちゃん、この子、夜になると喋るんだよ。」

「は?」

「寝る前にね、『おやすみ』って言うと、小さく『おやすみ…』って返してくれるの。」

冗談だろうと思って笑ったが、その夜、俺は奇妙な体験をした。

深夜、目を覚ますと──

「カタ…カタ…カタ…」

何かが床を歩くような音が聞こえた。

そっと布団から顔を出してみると、妹の部屋の前で、何かが動いている影が見えた。

「……妹か?」

そう思ってドアを開けると──

人形が、妹のベッドのそばに立っていた。

俺はゾッとした。

「……お前、そこに置いてたっけ?」

妹は寝ぼけた声で言った。

「え? ちゃんと棚に置いたよ?」

次の瞬間、俺はあることに気づいた。

人形の顔が、微かに笑っていた。

不気味なメッセージ

翌朝、妹が泣きながら俺の部屋に飛び込んできた。

「お兄ちゃん! 人形が勝手に動いてる!」

見ると、机の上に置いていたはずの人形が、部屋の入り口に立っていた。

しかも、妹が大事にしていたノートの1ページが破られ、そこには黒いインクでこう書かれていた。

『もっと一緒にいてね』

俺は血の気が引いた。

「お前、これ書いたの?」

妹は泣きながら首を振った。

人形の正体

気味が悪くなり、俺は人形を元の出品者に連絡した。

すると、すぐに返信が来た。

「申し訳ありません。その人形…何度手放しても、必ず戻ってくるんです。」

「は?」

「私は、燃やそうとしました。でも、次の日には玄関に戻ってきました。」

俺はゾッとした。

急いで人形をゴミ袋に詰め、外のゴミ捨て場に放り投げた。

それでも、翌朝。

妹のベッドの横に、あの人形は座っていた。

ニッコリと、笑って。



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