目次
不自然な個室
大学のキャンパスには、少し古い講義棟がある。そこにある3階の男子トイレは、なぜか誰も使いたがらない。
「なんかさ、あのトイレ、落ち着かないんだよな」
「気配、っていうか……誰かがずっといる感じがする」
実際、用がなくても必ず個室の一つは閉まっているのだ。
俺も気になりつつも、授業が立て込んでいたある日、そのトイレを使うことになった。
誰かいるのか?
小用を済ませていると、やはり一番奥の個室が閉まっている。
「……誰かいるのか?」
少し気味が悪くなりつつも、音も立てずにさっさと手を洗って出ようとした——その時。
ギィ……ギィ……
ドアの蝶番がゆっくりと軋む音がして、個室の扉がわずかに開いた。
だが、中には——誰もいなかった。
靴だけが、きれいに揃えて置いてある。
誰も出てきていない
俺は混乱しながら教室へ戻り、念のため近くの防犯カメラを確認させてもらった。
3階のトイレに俺が入ったのは映っていた。
けれど、それより前に誰かが入る様子は映っていない。
そして、俺が出た後も——誰も出てきていない。
噂の正体
数日後、施設管理の職員さんと話す機会があった。
「……あそこ、たまに点検に入るけど、不思議なことがあるんですよ」
「というと?」
「掃除を終えたあと、鍵を閉めたはずの個室の鍵が、勝手に開いてたり……逆に閉まってたり……。で、なぜか靴だけが置いてあるんです」
背筋が凍った。
あの靴は、“誰か”が使っていたものじゃなかったのか?
今も、そこに
それ以来、俺は3階のトイレには近づかなくなった。
だが、先日後輩からこんな話を聞いた。
「先輩、知ってます? 3階のトイレ、一番奥の個室、いつ見ても靴があるんですよ」
「……やっぱり、今もか」
「でも、先輩……あの靴、たまに位置が変わってるんですよ。向きが……逆になってたり、片方だけずれてたり……」
——あの個室は、もう誰かのものなのかもしれない。
そして今日もまた、誰かが気づかずにその個室の前に立つ。
中から、「コツン」と音がしたら——絶対に扉を開けてはいけない。
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