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海からの声──波間に呼ぶもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ひと気のない海辺の町

俺の母方の実家は、日本海に面した小さな港町にある。
夏休みのある年、俺はひとりでそこを訪れた。

観光地でもなく、海水浴場というわけでもないその町は、若者の姿もまばらで、静かな時が流れていた。

祖母は毎年のように「夜の海には絶対近づくなよ」と口癖のように言っていた。

「海から声が聞こえても、絶対返事しちゃダメだよ」

そんなことを言われても、最初は冗談だと思っていた。

——実際に“声”を聞くまでは。

波の音に混じる“それ”

夜8時を過ぎ、町はすっかり静まり返っていた。
エアコンのない古い家屋、眠れない俺はふと海辺まで散歩しようと外に出た。

堤防の上に立つと、暗闇の中で波の音が聞こえる。

ざざん……ざざん……

静かで心地よい音。

……と、思った瞬間。

「……たすけて……」

海から、はっきりとした“人の声”が聞こえた。

風の音や幻聴ではなかった。
波の合間に、確かに女の声が混じっていた。

「……ここに、いるの……さむいよ……」

俺は足がすくんだ。

堤防の下は真っ暗で、海面も見えない。

なのに、確かにそこに“誰か”がいるような気配がした。

声を返してはいけない

俺は祖母の言葉を思い出した。

「声がしても、絶対返しちゃダメ」

息を呑んで動かないでいると——

「……ねぇ、みてるんでしょう……?」

返事をしていないのに、“声”は俺の存在を感じ取っていた。

「たすけてよ……ひとりにしないで……」

ぐっ、と足元から何かに引っ張られるような寒気が走る。

次の瞬間、波がざぱんと大きく打ち寄せた。

暗闇の中から、白い手のようなものが一瞬だけ見えた。

俺は叫び声を上げて走って家へ戻った。

海で死んだ女の話

翌朝、震えながら祖母に昨夜の出来事を話すと、祖母は深く頷いた。

「……やっぱり、まだ出てくるんだね」

「え、やっぱりって……どういうこと?」

祖母は語った。

20年ほど前、あの堤防から若い女性が海に身を投げたという。

失恋が原因だったらしい。
遺体は、翌朝に堤防の下で見つかった。

だが——

その直後から、夜の海から声が聞こえるという噂が町中で囁かれるようになった。

返事をしてしまった者は、数日後に姿を消した。

誰も真相を語らないが、「あれは彼女が“返事をしてくれる人”を待っている」と恐れられているという。

今も、あの声は

それ以来、俺は二度と夜の海に近づかないようにしている。

でも、ときどき、夢にあの声が響く。

「……つぎは……あなた、でしょ……?」

目が覚めると、耳元で波の音が残っている。

海のない都会で生活していても、夜になると、あの声が聞こえてくる気がする。

誰もいない風呂場や窓の外から、かすかに。

そして、聞こえてくるのだ。

「……たすけて……」

——もし、あなたの耳にも“海からの声”が届いたら、どうか返事をしないでほしい。

その一言が、向こう側の世界との“扉”を開けてしまうかもしれないから。



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