目次
誰にも話せなかった思い出
これは今でも誰にも話せずにいる、小学生の頃の奇妙な体験です。
当時、小学3年生だった私は、毎日のように近所の友達と遊んでいました。
その日も真夏の夕方、いつものように近所の神社裏で「かくれんぼ」をしていたんです。
でも、その日はひとり、ちょっと離れたところに隠れてしまったんです。
「神社の裏手にある、誰も使っていない小道」——大人たちからは「あそこは行くな」と注意されていた場所。
小道の先にあったもの
草むらをかき分けて進むと、木々に囲まれた静かな空間に出ました。
そこには、見たことのない小さな神棚のような祠があり、誰かが置いたらしいお菓子が並べられていました。
不思議に思って近づこうとした瞬間、背後から風もないのにガサガサと木が揺れる音。
振り返っても、誰もいない。
でも、「帰ったほうがいいよ」と、子供の声が確かに聞こえました。
消えた時間
慌てて神社へ戻ると、友達や母親が心配そうに私を探していました。
「どこ行ってたの！ 2時間もいなかったのよ！」
でも、私の感覚では10分も経っていない。
時計を見ても、まったく合わない。
そして、あの小道を翌日もう一度探しに行ったけれど、草が生い茂っていて、祠も何もなかった。
あの日通ったはずの道は、まるで最初から存在しなかったように消えていました。
写真の中の証拠
その夏の終わり、家族で現像した夏休みの写真を見返していた時のことです。
一枚だけ、記憶にない写真がありました。
神社の裏手、木々の奥に小さな祠が写っている。
——そして、その前に誰かの小さな背中が写っていた。
それは、間違いなく私でした。
あれは夢だったのか
今でもあの体験を「夢だった」と自分に言い聞かせています。
けれど、夏になると、神社の裏手を通るたびに、草むらの奥から子供の声が呼ぶような気がするのです。
「また、来てくれる？」
そんな声が。
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