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引っ越したばかりの部屋で
これは、数年前、私が一人暮らしを始めたときに実際に体験した出来事です。
新居は築20年以上の1Kアパート。
少し古いが、静かな住宅街で、駅にも近くて便利な場所でした。
最初に違和感を覚えたのは、台所の上にある吊り戸棚でした。
調味料をしまおうとして開けたとき、なぜかほんの一瞬だけ「風が吹いたような冷気」を感じたのです。
「……換気のせいかな」
そう思って扉を閉め、気にしないようにしました。
何度も開いている
数日後、朝起きるとその戸棚の扉がわずかに開いていました。
前日、確実に閉めたはずなのに。
しかも、内側から押し出されたような形で、わずかに隙間が空いている。
手で押して閉め直したけれど、翌朝また同じように開いていた。
怖くなり、ガムテープでしっかりと留めてみた。
それでも、朝には剥がれて開いている。
「……誰かいるのか？」
そう思い始めるのに、時間はかかりませんでした。
夜中に音がする
ある晩、寝ようと電気を消した瞬間、台所のほうから「コトッ…カサッ…」という音がした。
電気をつけて見に行くと、やはり戸棚の扉が少しだけ開いている。
中を覗くと——
一瞬、誰かの黒い髪の毛が見えたような気がして、
慌てて扉を閉め直しました。
確かに“いる”
その翌日、霊感の強いという職場の先輩に相談したところ、
その場でこう言われました。
「その部屋、前に女の人が住んでてね。
……自殺してるよ。
吊り戸棚の中で。」
背筋が凍りました。
調べると、確かに事故物件の履歴があったことがわかりました。
最後に聞こえた声
引っ越しを決意した夜、戸棚の扉を最後に開けて、
「ごめん、もうここにはいられない」と小さく呟きました。
その時、はっきりと中から返事が聞こえた。
「わたしも……ここから出たいの……」
あの声を、今も忘れられません。
それ以来、戸棚を開けるときには、誰かが中にいるかもしれないという恐怖が付きまとうようになりました。
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