目次
■1. 古びた壁紙がきっかけだった
最近、引っ越し先の部屋をセルフリフォームしようと、
壁紙のサンプルを見ていたときのことです。
何気なく手に取ったくすんだベージュの、花模様の壁紙。
その瞬間、理由もなく、強烈な嫌悪感とめまいに襲われました。
何かを思い出しかけている感覚だけが残り、手が止まりました。
しばらくして──思い出したんです。
もう二度と思い出すことはないと思っていた、あの部屋の記憶を。
■2. 鍵のかかった奥の部屋
5歳くらいの頃、母方の祖母の家にしばらく預けられていたことがありました。
その家には、普段絶対に開けてはいけないと言われていた奥の和室がありました。
祖母も、母もその部屋には一切触れず、
ふすまには内鍵がかけられていました。
けれどある日──私はその鍵が開いているのを見つけたんです。
理由もなく、吸い寄せられるようにして、ふすまを開けました。
■3. その部屋の中
部屋の中は、異様に古びた空気で満ちていて、
その壁一面に、まさにあの壁紙──くすんだ花模様が貼られていました。
畳の上には何かをくるんだ布団のようなものがあり、
その隣にはぬいぐるみの山。
ただ、どれも埃だらけで、誰も触れていないように見えました。
記憶の中の自分は、部屋の中央まで歩いて、
布団の中を覗き込んだ──
そこにあったのは、黒く焼け焦げた何か。
それが人間なのか人形なのか、判断がつかなかった。
そして、確かに私は聞いたんです。
「……なんで来たの」
背後から、女の人の声。
低く、感情のない声。
怖くて振り向けなかった。
■4. 忘れていた理由
そのあとどうやって部屋を出たのか、家族に話したのか。
記憶はそこから急に曖昧になります。
ただ、その日を境に奥の部屋は完全に閉じられ、二度と開くことはなかった。
そして、あの記憶も、なぜか20年以上も思い出すことがなかった。
今回壁紙を見た瞬間、あの部屋の光景が鮮明に蘇ったというわけです。
■5. 夢だった、きっと
今、こうして冷静に思い返すと、やっぱり夢だったんじゃないかという気もします。
幼い子供の想像が、古い記憶に混ざり合ってできた“幻”だったんだと。
だって、そんな部屋、なかったかもしれないし、
あの声も、布団の中身も、本当に見たものかどうか、確かめようがない。
きっと、あれは夢だ。
忘れていただけで、夢の一部が、たまたま蘇ったんだ。
そう思うようにしている。
……思いたい。
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