目次
【道を間違えただけのはずだった】
それは去年の梅雨時期の夜。
職場で残業を終え、車で帰宅している途中のことだった。
普段通らない裏道を使えば早く帰れると思い、カーナビ任せで抜け道を進んでいた。
雨は止んでいたが、路面はまだ濡れていて、街灯もまばらな静かな道。
ところが、ある交差点で、
ナビが「右折してください」と案内を出した瞬間——
強い耳鳴りとともに、景色が一変した。
【明らかに違う世界】
曲がった先の道路は、さっきまでの街並みとは明らかに違っていた。
全体が薄く青白いフィルターをかけたような色合いで、
歩道の標識や看板もすべて、どこか歪んだ文字で書かれていた。
人影はない。建物はあるが、すべての窓が真っ黒で何も映っていない。
なのに、すべてが「動いている気配」だけは確かに感じられた。
まるで、誰もいないのに、誰かにずっと見られている感覚。
【時計が止まる】
スマホの時計を見た。21:12。
だが、どれだけ走っても時計の時間が1秒も進まなかった。
車のメーターは動いているし、ナビも同じ通り名を表示し続けている。
その通りの名前は、どこを走っても「カエリミチ」と表示されていた。
そして、後ろからは誰もいないのにヘッドライトの反射が続いていた。
【戻る方法】
恐怖心がピークに達した頃、
道の脇にあった赤いポストの上にカラスが一羽、止まっていた。
一瞬、「なぜこんな場所に?」と思ったが、
それと同時にナビが突如ルート変更し、「Uターンしてください」と告げた。
急いで車を回転させ、元来た道を戻る。
すると、数十秒も経たないうちに——
さっきの交差点に、再び“通常の世界”の景色が戻ってきた。
【翌日の確認】
翌日、その交差点をもう一度訪れた。
ただの住宅街で、特に異変はなかった。
けれど、曲がったはずの道は、そこには存在していなかった。
ナビの履歴も、「右折した」地点以降がまっさらになっていた。
唯一の痕跡は、車のボンネットにこびりついた小さな羽毛。
それは、あのカラスのもののようだった。
【“異界”は重なっているのかもしれない】
あれは夢でも幻覚でもなかった。
たぶん、あの時偶然、何かの拍子で——
「この世界とは少しだけずれた場所」に踏み込んでしまったのだと思う。
そして今も、
あの交差点の信号が青から赤に変わるわずかな一瞬だけ、
“異界”の扉が**開いているのかもしれない。
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